【Column】SF映画の金字塔「スター・ウォーズ」シリーズを紐解くと浮かび上がる‘‘父親の物語’’
6月19日は「父の日」である。決していつもそばにいるわけではないが、家族の生活を守るため仕事に出かける…そんな大きな存在に感謝を伝える日だ。
映画の世界にも様々な‘‘父親’’が登場するが、今回はSF映画の金字塔「スター・ウォーズ」シリーズに焦点を絞って、「父と子」のストーリーに着目してみたい。
実は「スター・ウォーズ」は、父親の物語でもあるのだ。
- 運命に翻弄され、戦わざるを得なくなった‘‘父と息子’’…「スター・ウォーズ」旧三部作
- 父親のいない少年と父親代わりとなった2人のジェダイ…「スター・ウォーズ」新三部作
- 息子を正しい道へ導こうとする父、それに反抗する息子…「スター・ウォーズ」続三部作
- これはまさしくスター・ウォーズ版『子連れ狼』だ!『マンダロリアン』
- 映画情報番組『What's Up Hollywood』YouTubeで更新中!
運命に翻弄され、戦わざるを得なくなった‘‘父と息子’’…「スター・ウォーズ」旧三部作
『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』より幕を開ける旧三部作は、主人公ルーク・スカイウォーカーとその父でありシスの暗黒卿でもあるダース・ベイダーとの戦いがメインのストーリーが展開された。
ダース・ベイダーがルークに父親だと告げる場面はあまりにも有名なシーンである。
まさに壮絶な‘‘親子喧嘩’’をテーマにしていると言っても過言ではないが、父と息子というのは時に反目し合う瞬間があるが、やがて雪解けの時を迎えるようなものだ。
ルークとダース・ベイダーの関係性だって普通の親子と変わらない。
銀河の救世主であるルークと敵対関係になってしまったベイダー…お互い本気でぶつかり合った2人だが、最後は‘‘親子の絆’’がモノを言い、ベイダーは息子のルークの味方となる。
「スター・ウォーズ」旧三部作は、運命に翻弄された‘‘親子の物語’’なのだ。
ちなみにベイダーとはドイツ語で父親という意味であり、『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』でダース・ベイダーがルークの父親だという衝撃展開を予想していたファンも多いという。
父親のいない少年と父親代わりとなった2人のジェダイ…「スター・ウォーズ」新三部作
1999年の『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』から始まった新三部作の主人公は、のちにダース・ベイダーとなる運命を背負ったアナキン・スカイウォーカー。
初登場時から父親のいない彼には、父親代わりとなった2人のジェダイがいた。
まず一人目は、やはりアナキンをフォースにバランスをもたらす者だと信じ、パダワン(弟子)として迎え入れた、クワイ=ガン・ジン。
クワイ=ガンはその後の戦いで命を落としてしまうため、そこまで長い期間を共にしたわけではないが、奴隷として生きてきた少年にとって、自分を信じ導いてくれたクワイ=ガンは、初めてできた‘‘父親’’のような存在だった。
そして2人目は、クワイ=ガンの意志を受け継ぎ、アナキンを弟子として育て上げようとするオビ=ワン・ケノービだ。
クワイ=ガンを師匠に、兄弟子であるオビ=ワンとの関係性は、どちらかと言えば‘‘兄弟’’と呼ぶのが相応しいかもしれない。
しかしながら、オビ=ワンはアナキンを教育する立場にあり、立派なジェダイの騎士へと導く存在。
すなわちは父親のあるべき姿を体現した存在なのだ。
アナキン自身も『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』でオビ=ワンを‘‘父親代わり’’と呼んでいる。
オビ=ワンはその後、アナキンの子供であるルークを守護する立場にもなり、スカイワーカー家2世代の‘‘父親代わり’’という役目を全うした。
息子を正しい道へ導こうとする父、それに反抗する息子…「スター・ウォーズ」続三部作
2015年に『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』より幕を開けた続三部作。
一見すると、‘‘父親’’の物語のようには感じない新世代のキャラクターたちが主導していくストーリーなのだが、しっかりと旧三部作で活躍したキャラクターたちが、今度は‘‘父親’’として物語を支えているのだ。
中でも特に印象深いのが、旧三部作では一匹狼のアウトローとして銀河に名前を轟かせていたハン・ソロが、レイアと結ばれ、父親となっている点だ。
息子であるベン・ソロが暗黒面に惹かれ、カイロ・レンと名を改めたことで、元の正しい道へと導こうとする姿が何とも父親らしさを醸し出している。
しかし反抗期にある息子は父親の話を一切聞こうとしない…やがて、ソロ親子は悲劇の末路を遂げることになってしまうのだ。
その後もハンは、カイロ・レンの意識の中にたびたび姿を現し、何度も正しい道へと導こうとする。
さらに続三部作では、主人公レイに対してフォースのトレーニングをつけるルーク・スカイウォーカーが、レイの‘‘父親代わり’’としての役割を果たしており、旧三部作のメンバーたちが今度は‘‘親の世代’’となり、活躍する姿を見ることができる。
これはまさしくスター・ウォーズ版『子連れ狼』だ!『マンダロリアン』
『マンダロリアン』は、1977年から映画ファンを楽しませている「スター・ウォーズ」シリーズの意外にも初となるTVドラマシリーズである。
主人公となるのは、悪名高きマンダロリアン族の生き残りだ。
銀河帝国崩壊後、孤高のバウンティハンター(賞金稼ぎ)となったマンダロリアン=マンドーが、あるミッションを請け負ったことで、利益ではない‘‘何か’’に目覚めていく姿を描く。
そのミッションというのが、伝説のジェダイマスターであるヨーダを彷彿させるザ・チャイルドをクライアントに送り届けるというものだった。
後にグローグーという名であることが明らかになる、この小さき命と接することで、マンドーに人間臭さのようなものが芽生え始め、まるで‘‘親子’’であるかのような関係性を見せ始めるのだ。
この2人の‘‘親子関係’’に、名作時代劇『子連れ狼』を連想するファンも少なくない。
刺客を生業とし、冥府魔道を生きる拝一刀と大五郎の親子と重なって見えるのだ。
主人公がどちらも刺客を生業としている点や大五郎が箱車で移動するのに対して、ザ・チャイルドも同様のもので運ばれる点なども似通っている。
まさに、本作は「スター・ウォーズ」版『子連れ狼』と言っても過言ではない作品なのだ。
三世代にわたる‘‘親子の物語’’が映し出された「スター・ウォーズ」9作品。そして、小さな子供と賞金稼ぎによる、いつ命を落とすかもわからない旅路を描いた『マンダロリアン』。
「スター・ウォーズ」シリーズというのは壮大なSF叙事詩でありながら、同時に現実で生きる我々と大差ない‘‘父と子’’のドラマを映し出した作品なのだ。
「スター・ウォーズ」のストーリーが三世代によって紡がれたように、父親、子供、そして孫の世代も一緒になって楽しめるのではないだろうか。
「スター・ウォーズ」シリーズは、ディズニープラスで配信中。(文・構成:zash)
映画情報番組『What's Up Hollywood』YouTubeで更新中!