【Column】新たな視点で映し出される続編は、まさにLA讃美歌!『ハリウッド・スターガール』(2022)
ディズニープラスで2022年6月3日より配信中のオリジナル映画『ハリウッド・スターガール』は、2020年に公開された『スターガール』の続編である。しかしながら、視点や舞台を変更することにより、全く異なる印象を与え、前作を未見でも楽しめる作品に仕上がっている。
- 舞台はLAへ!‘‘ハリウッド・スターガール’’の新たな冒険
- 前作とは異なる視点で語られる‘‘続編’’
- ロサンゼルスの心地よい風を感じさせるLA讃美歌
- 純粋無垢なスターガールを体現するグレース・ヴァンダーウォール
- 映画情報番組『What's Up Hollywood』YouTubeで更新中!
舞台はLAへ!‘‘ハリウッド・スターガール’’の新たな冒険
ウクレレが得意で風変りな女の子スターガール・キャラウェイ(グレース・ヴァンダーウォール)が、母の仕事の都合で、ロサンゼルスに引っ越しをすることになり、新天地で新たな生活をスタートさせる。
ある日、引っ越し先の自宅で歌を歌っていたスターガールは、兄と共に映画製作を目指すエヴァン(イライジャ・リチャードソン)と出会う。
エヴァンと意気投合したスターガールは、彼の兄・テレル(タイレル・ジャクソン・ウィリアムズ)が働くバーのオープンマイクイベントへと招待され、そこで伝説の歌手ロクサーヌ・マーテル(ユマ・サーマン)との偶然の出会いを果たす。
さらにステージでパフォーマンスを披露したことがきっかけで、テレルから映画に出演してくれと誘われ、心を許せる仲間や自分らしく輝ける居場所をようやく見つけたスターガールは、‘‘ハリウッド・スターガール’’として自分の音楽や可能性を信じて新たな冒険へと踏み出していくのだった…。
前作とは異なる視点で語られる‘‘続編’’
2020年に公開された前作『スターガール』は、幼い頃に父親を亡くし、転校先で馴染めずにいるリオという男子生徒の目線で物語が展開され、目立たないでいようと決意したリオに対して、不思議なオーラを纏った少女スターガールが多大な影響を及ぼしていくというのが物語の本筋であったが、今回の続編である『ハリウッド・スターガール』は、打って変わって、スターガールの目線から小気味いい物語が繰り広げられる。
したがって、前作とは視聴者が感情移入する対象が異なるというわけだ。
もともと『スターガール』という作品は、スターガールの名前がタイトルに冠されながらも、物語の語り手となるのは別の人物。つまりは「スターガールってこんな子だった」というような別のキャラクターの印象から形作られていくような作品だった。
それが続編では、スターガールの視点からスターガールのキャラクター性を明確にし、前作ではぼんやりとしていたスターガールの生活や人生をハッキリさせることに成功している。
そういった点でも前作がかなりの変化球だったのに対し、今回の続編はド直球で攻め込んできた印象を大いに受ける。
この緩急自在の投球術に翻弄されること請け合いの一本である。
ロサンゼルスの心地よい風を感じさせるLA讃美歌
本作は、一人の少女が自身の居場所を見つけ、本当にやりたいことに挑戦していく姿を描いたハートウォーミングな青春ドラマであるが、同時に映画や音楽といったエンターテイメントの都であるロサンゼルスを称えた讃美歌のような印象を与える作品でもある。
劇中のいたるところで、ハリウッドの王道的な街並みとは異なるロサンゼルスの姿を映し出した情景が際立っているのだ。
ロサンゼルスと言えば煌びやかな街並みのイメージが強いかもしれないが、本作で描かれるロサンゼルスは、どちらかと言えばセレブというよりも普通の人々が生活をしている街並み。
そのため路地裏のバーであったり、都会の片隅に位置する集合住宅、露店が立ち並ぶ一角など、何気ないロサンゼルスの風景を低予算のインディペンデント映画のような映像でしっかりと記録しているのだ。
どこか夏の日の白日夢を観ているかのような映像体験からは、ロサンゼルスの心地いい風を感じることができ、まるでその場にいるような錯覚さえ覚える。
また、劇中でスターガールに影響を与えるキャラクターたちも、かつての映画プロデューサーやスターとしての道から逸脱した伝説の歌手など、煌びやかなハリウッドから退いた人生を送っている者たちが多く、夢の街からかけ離れたロサンゼルスを映し出すことをテーマにしているようにさえ感じさせるのである。
純粋無垢なスターガールを体現するグレース・ヴァンダーウォール
本作でスターガール・キャラウェイ役を演じるのは、前作から続投となるグレース・ヴァンダーウォール。
ショートカットで新鮮な印象を与えるグレースは、より深くスターガールというキャラクターを理解して、その感情の変化や成長を演じて魅せたと言えるだろう。
相変わらず不思議なオーラを纏った独特な存在感は健在であり、そこへどこにでもいるような普通の少女らしい純粋無垢なキャラクター性を加えることで、前作よりも人間味あふれる表情が多くなったように思う次第。
もちろん歌声も素晴らしいの一言に尽きる。
相手役となるイライジャ・リチャードソンとの相性も抜群であった。
そのほかに『科学ファミリー ラボラッツ』などディズニーXD作品でおなじみのタイレル・ジャクソン・ウィリアムズ、『キル・ビル』シリーズのユマ・サーマン、マーベル映画『アントマン』シリーズのジュディ・グリアなどが脇を固めており、スターガールを支えた見事な演技を披露する。
スターガールの挑戦を通じて、観ているこちらまでもが「頑張ろう!」という気持ちにさせられる、そんな映画である。
‘‘夢に生きる’’とはどういうことなのか?そんなことを教えてくれる素敵な映画『ハリウッド・スターガール』は、ディズニープラスで配信中。(文・構成:zash)
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