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【Column】まさにアメコミ映画界の縮図を見ているかのようだ!『ザ・ボーイズ(シーズン3)』

Amazon Prime Videoにて絶賛配信中の海外ドラマ『ザ・ボーイズ』は、一見その過激すぎる描写ばかりに気を取られがちな作品であるが、現代のアメコミ映画全盛期を揶揄しているかのようなストーリー展開も同時に楽しめる作品である。とりわけシーズン3では、そういった描写が実に顕著であった。

 

 

 

 

『ザ・ボーイズ』とは?

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『ザ・ボーイズ』は、ガース・エニスとダリック・ロバートソンによる同名コミックスを原作に、「世界を守るスーパーヒーローたちが実は裏では悪事を働いており、欲望にまみれた人間だったら」というテーマのもと描き出される、異色のアメコミ・ドラマ。

アメコミ映画が全世界を席巻中のこの時代にふさわしい内容のドラマが展開されており、現実世界におけるマーベルなどのマーチャンダイジングを比喩的に捉えた内容が面白い。

また、ヒーローたちがヴォ―ト・インターナショナルという会社に管理され、イベントに駆り出されたり、リアリティ番組の撮影に臨んだり、個々のヒーローのイメージを作り上げようとする様は、さながらハリウッドなどの芸能界の形態をあからさまにしているような印象も受け、風刺コメディとしても楽しめる作品である。

 

 

 

時効性Vの登場でさらなる盛り上がりを見せる、シーズン3

『ザ・ボーイズ』シーズン3 (c)Amazon Studios Prime Videoで独占配信中

 

ナチスのストームフロントとの関係が暴かれ、最強最悪のヒーロー、ホームランダーもすっかりおとなしくなってしまい、平穏な時を迎えていた、

ブッチャー(カール・アーバン)ら‘‘ザ・ボーイズ’’の面々は、ヴィクトリア・ニューマン(クローディア・ドゥーミット)により立ち上げられた超能力管理局で働くヒューイ(ジャック・クエイド)の元で、違法行為を犯したヒーローたちを取り締まる活動を続けていた。

そんな中、ブッチャーはホームランダーが登場する以前の時代、最凶と謳われたヒーロー、ソルジャー・ボーイ(ジェンセン・アクレス)を葬り去ったとされる武器を探すことを決意。

これが、ホームランダーを倒すための最後の手段として思いついたアイデアだった。

さらにブッチャーは、クイーン・メイヴ(ドミニク・マケリゴット)より託された24時間超能力を持続することができる持効性Vこと‘‘V24’’を使用し、ホームランダーに引けを取らないスーパーパワーを手にするのだった…。

 

 

 

まさにアメコミ映画界の縮図を見ているかのようなシーズン

『ザ・ボーイズ』シーズン3 (c)Amazon Studios Prime Videoで独占配信中

 

前述のように、本作はアメリカン・コミックスの世界を風刺的に描いている節がある。

それは、劇中に登場する主要なヒーローたちが、スーパーマンワンダーウーマン、アクアマンといったDCコミックスのスーパーヒーローたちを象ったキャラクターであることからもわかるが、今シーズンはより一層、アメコミ作品とりわけDCとマーベルというアメコミ界の二大勢力を揶揄するかのようなストーリー展開が目を引くのだ。

我々が生活している現実の世界では、今や「アメコミ映画」というジャンルは、ある一定のファン層へと向けたものではなく、誰もが楽しめる一大エンターテイメントと化している。

そんなアメコミ映画全盛の時代で、マーベル映画とDC映画というのは、お互いが凌ぎを削る二大巨頭として君臨しているわけだ。

現にマーベルがMCUマーベル・シネマティック・ユニバース)という作品群を形成しているのに対し、DCはDCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)というものを作り上げ、それぞれが独自の方法で世界観を共有した作品たちを製作している。

どちらの作風が好みかというのは人それぞれであると思うが、この熾烈な「アメコミ映画戦争」はもうすでに10年以上も続いている。

 

『ザ・ボーイズ』シーズン3 (c)Amazon Studios Prime Videoで独占配信中

 

このDCとマーベルによるバトルの縮図であるかのようなストーリーが繰り広げられるのが、まさに『ザ・ボーイズ』シーズン3である。

現役最強のヒーローであるホームランダーとかつてヒーローの象徴と言われた伝説のソルジャー・ボーイの図式が、何を隠そう「DC VS マーベル」の縮図となっているのだ。

ホームランダーはDCのスーパーマン、ソルジャー・ボーイはマーベルのキャプテン・アメリカ…まるで世界的に有名な二大ヒーローによるバトルを観ているかのように映る。

どちらが勝利するのかはあえて言わないでおくが、アメコミ映画全盛の時代だからこそ出せる面白さと強烈なインパクトだと言えるだろう。

 

 

 

相変わらず過激すぎる!さらにはミュージカルも!?

『ザ・ボーイズ』シーズン3 (c)Amazon Studios Prime Videoで独占配信中

 

とはいえ、今シーズンも相変わらず過激な描写が印象的なシーズンとなっている。

冒頭からいきなり、伸縮自在の身体を駆使するヒーローが登場し、あろうことか〇〇の穴に潜り込むといった場面が描かれる。

開始早々いきなりの下ネタに驚かされたのは言うまでもないが、こんなのは序の口に過ぎなかった。

シーズン3ではこれまでのシーズンよりも過激描写がさらに増したようにも思う。

巷では、この伸縮自在のヒーローをアントマンのようだと捉えるファンも多く、アベンジャーズとサノスの戦いで、あの○○の穴に潜り込む戦法が使えたのではないかという論争を呼んでいるようだ。

 

『ザ・ボーイズ』シーズン3 (c)Amazon Studios Prime Videoで独占配信中

 

グロテスクなバイオレンス描写満載のシーズンではあるが、時折、織り交ぜられる箸休め的なシーンは、視聴者の心を大いに落ち着かせてくれる。

今シーズンには、『ザ・ボーイズ』の世界観からは想像もできない、ミュージカルシーンも登場する。

福原かれん演じるキミコが素晴らしいパフォーマンスを魅せてくれる場面であり、とてもハートウォーミングな一幕を観られることだろう。

その他にも、1990年代から2000年代アイドル、オーディション番組『アメリカン・アイドル』のパロディなんかもあり、アメリカのショービジネスに詳しければ詳しいだけ面白い仕様にもなっている。

 

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近年の#MeToo運動やBLM運動などにも注視されており、架空の世界を舞台にしながらも、現実世界とシンクロしているのも魅力。

もしも強大な力を持った偉大な存在(本作ではホームランダー)が現れたら、人間誰しもが、善悪の区別がつかずに、ある種の集団ヒステリーを起こしかねないということも謳っており、恐ろしいほどのリアリズムを感じさせる次第である。

 

 

 

アニメ版『ザ・ボーイズ ダイアボリカル』も面白い!

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Amazon Prime Videoでは『ザ・ボーイズ ダイアボリカル』というアニメ版も配信されている。

同作は、『ザ・ボーイズ』のスピンオフとして8つの短編アニメで構成されているのだが、時にはディズニー・アニメーションやルーニー・テューンズのようであり、時には『ザ・シンプソンズ』や『サウスパーク』を思わせる風刺のきいた毒気のある世界観、時には可愛い作画が印象深い日本のアニメ風であったりと、毎回スタイルの異なるアニメになっていて面白い。

主にコンパウンドVが物語の発端となるのだが、相変わらず下品極まりない部分はオリジナルの魅力を継承している。

若き日のホームランダーがいかにして最強最悪のヒーローとなったのか、そのきっかけとなる事件の話は、かなり興味深い。

 

『ザ・ボーイズ』シーズン3、『ザ・ボーイズ ダイアボリカル』は、Amazon Prime Videoにて独占配信中。(文・構成:zash)

 

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