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【Column】混沌渦巻くゴッサムの街を舞台にしたフィルムノワール『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(2022)

アメリカの老舗アメコミブランド「DCコミックス」で、スーパーマンと並び、二大看板ヒーローとして君臨している、バットマン

これまでも数多くの実写化作品が世に送り出されてきた同ヒーローであるが、この2022年、装いを新たに再び‘‘飛翔’’した。

『THE BATMANザ・バットマン-』と銘打たれた新たなバットマン映画は、予想とは裏腹に、ダークでミステリアスで不穏な空気を纏った作品であった。

 

 

 

 

DCコミックスバットマン」の歴史

 
 
 
 
 
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1939年にディテクティブ・コミックスでデビューを飾った「バットマン」は、当時、現在のようなシリアス傾向にある作品ではなく、明るい雰囲気の作品であった。

それが時代を重ねるごとに変化を遂げていき、今日のダークでシリアスな作品となった歴史を持つ。

 

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最初の実写化作品であるTVシリーズ『怪鳥人バットマン』もまた初期のコミカル要素を継承した作品になっており、コミックスを彷彿させる擬音を画面上に表示させたり、ポップなオープニングで視聴者を楽しませるなど、子供たちに大いに支持され、それに伴って、一躍メジャー作品となったのだ。

 

 
 
 
 
 
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続く実写化作品と言えば、やはり1989年に公開されたティム・バートン監督による映画『バットマン』。

同作はメガホンをとったティム・バートンらしいダーク・ファンタジーに仕上がっており、外連味のあるゴッサム・シティの街並みやヴィランたちの存在感が終始際立っていた作品だった。しばしば、アメコミ映画の歴史を大きく変えた作品としても数えられている作品である。

1992年には『バットマン リターンズ』、1995年には『バットマン フォーエヴァー』、1997年には『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』と、続編であり続編ではない世界観を受け継いだバットマン映画が次々と製作された。

未だアメコミ映画全盛ではない時代に唯一気を吐いた作品群と言っても良いだろう。

そんなバットマン映画は2005年に、ある‘‘鬼才’’の手によって大きく生まれ変わる。

クリストファー・ノーラン監督がメガホンをとった『バットマン ビギンズ』だ。

 

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のちに「ダークナイト3部作」と呼ばれることになるシリーズの礎を築いた同作は、それまでのアメコミ映画特有の現実離れした描写を廃し、圧倒的リアリズムのもと、バットマンもといブルース・ウェインの物語を描き切った。

同作の登場により、アメコミ映画のレベルは一段階上がり、時代はアメコミ映画全盛期へと突入したのである。

2012年に「ダークナイト3部作」が完結してからは、2016年の『バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生』を皮切りに、「DCエクステンデッド・ユニバース」でバットマンは活躍。

しかしながら、バットマン単独の実写映画というのは、『ダークナイト ライジング』公開から10年もの間、世に解き放たれることはなかった。

 

 

 

約10年ぶりに再び飛翔したバットマンは若き探偵

そして2022年、スクリーンに再びバットマン映画が帰ってきたのである。

それが『THE BATMANザ・バットマン-』だ。

 

『THE BATMANザ・バットマン-』 DC LOGO, BATMAN and all related characters and elements TM and © DC.

 

本作の主人公は、優しくもミステリアスな青年ブルース・ウェインロバート・パティンソン)。

両親殺害の復讐を誓い、悪と戦う‘‘バットマン’’になって2年の時が過ぎた。

ある日、権力者を標的にした連続殺人事件が発生。

その犯人を名乗るのは、史上最狂の知能犯リドラーポール・ダノ)。

彼は犯行の際、必ず‘‘なぞなぞ’’を残し、警察や世界一優秀な探偵でもあるブルースを挑発する。

最後のメッセージ…それは「次の犠牲者はバットマン」。

リドラーはいったい何のために犯行を繰り返すのか?

そして暴かれる、政府の陰謀とブルースにまつわる過去の非道や父親の罪...。

すべてを奪おうとするリドラーを前に、ついにブルースの良心が狂気に侵蝕されていく…。

 

 

 

DCコミックス=ディテクティブ・コミックス

バットマン」シリーズと言えば、DCコミックス原作であるが、この‘‘DC’’というのは、もともとディテクティブ・コミックスの略称なのだ。

つまりは「バットマン」という作品は本来、ゴッサム・シティで起きた事件を解決へと導く一種の「探偵もの」だったというわけだ。

その「バットマン」の本来あるべき姿を体現した作品こそが『THE BATMANザ・バットマン-』で、バットマンが私立探偵のような役割を果たし、いわば自警団員的な存在でありながら、ゴッサム市警のゴードン警部補と2人で、要人ばかりを狙った連続殺人事件の解決に挑んでいくのだ。

 

『THE BATMANザ・バットマン-』 DC LOGO, BATMAN and all related characters and elements TM and © DC.

 

作品全体を通して、夜の闇に包まれたゴッサム・シティを舞台としていることが多く、暗闇の中で暗躍するリドラーを、同じく闇を住処にする孤高の騎士バットマンが相手をする。

まさしくフィルムノワールと言えるような作品に仕上がっていると同時に、犯人によって残されたメッセージを元に事件の真相に迫っていく展開などはさながらデヴィッド・フィンチャーの『セブン』(1995)を彷彿させるサイコ・サスペンスの様相を呈す。

アメコミ・アクションと呼ぶには少し語弊があるようにさえ感じてしまうのだ。

そういった意味では、これまでのバットマン映画とは一線を画す魅力を放っている作品と言えるだろう。

 

 

 

『Marvel デアデビル』と『ダークナイト』からの影響

しかしながら決してアクションシーンが全くないというわけではない。

本作で監督を務めるマット・リーヴスは、2008年の映画『クローバーフィールド/HAKAISHA』で大注目を集めたフィルムメーカーである。

彼の真骨頂…それは主観映像によるPOVだと思うが、本作でも随所に迫力ある主観映像が盛り込まれており、臨場感ある映像を体感できる。

 

『THE BATMANザ・バットマン-』 DC LOGO, BATMAN and all related characters and elements TM and © DC.

 

また、本作の主人公はバットマンとして活躍し始めたばかりのブルース・ウェインだ。

そのため、様々な部分で未熟さが目立ち、戦闘に関してもスタイルが確立されていないように思う。

こういった部分は2015年よりNetflixで配信された『Marvel デアデビル』と似通っている。

同作のデアデビルは自らのスーツすら完成しておらず、突貫工事でもしに行くのかと思うような服装で、敵組織と戦いを繰り広げる。

『THE BATMANザ・バットマン-』のバットマンはコスチュームこそ身に纏っているが、粗削りな戦闘スタイルや捜査方法に、どこかバンダナ姿のデアデビルと重ねてしまうところがあった。

 

『THE BATMANザ・バットマン-』 DC LOGO, BATMAN and all related characters and elements TM and © DC.

 

同時に、やはりクリストファー・ノーランが手掛けた『ダークナイト』(2008)の偉大さを良くも悪くも感じさせる。

本作はノーラン版の「ダークナイト3部作」のリアルさとそれ以前のバットマン映画にあったファンタジックな世界観の中間に位置するような雰囲気を漂わせている。

ゴッサムの街並みなどにはアメコミらしさを大いに感じさせるも、ストーリーやテーマというのは極めてシリアスでリアリティ溢れる描写が目を引く。

バットマン」をさも現実のようなリアリティで描き切ったというのは「ダークナイト3部作」の大発明であったが、どうにも『ダークナイト』の呪縛から抜け出せていないような印象を受けるのもまた事実なのだ。

随所に「ダークナイト3部作」で観たような既視感ある演出やカメラワークが存在している。

あれほどまで高く評価された作品であるため、影響を受けるのは仕方がないことだが、もう少し新鮮味のある描写が観たかったというところはある。まあ、オマージュと言ってしまえば、それまでなのだが…。

 

 

 

新生バットマン役に扮するロバート・パティンソン

『THE BATMANザ・バットマン-』 DC LOGO, BATMAN and all related characters and elements TM and © DC.

 

本作で新たにバットマン役に抜擢されたロバート・パティンソンは、どこか人間味を感じさせない機械的ゴッサムの街を守り続けるダークヒーロー像を主体とした演技を披露。

その退廃的な演技は、これまでのバットマン俳優にはなかった魅力で溢れており、時には感情的になってしまう姿にも説得力がある。

正直なところ、素顔の場面というのは極めて少なく印象薄ではあるが、バットマンのマスクから覗く瞳の動きだけで感情を表現しているのは素晴らしいの一言だ。

 

『THE BATMANザ・バットマン-』 DC LOGO, BATMAN and all related characters and elements TM and © DC.

 

そのほか、リドラー役のポール・ダノ、ペンギン役のコリン・ファレル、ファルコーネ役のジョン・タトゥーロキャットウーマン役のゾーイ・クラヴィッツ、アルフレッド役のアンディ・サーキス、そしてゴードン役のジェフリー・ライトと、そうそうたる実力派たちで脇を固めている。

しっかりとゴッサムの住人となった彼らの存在感ある演技にも注目したい。

 

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狂気めいた連続殺人事件に、若きバットマンが挑む…。

ゴッサムの街に舞い戻ったバットマンは何を思うのか?(文・構成:zash)

 

www.cinematoday.jp

 

 

 

リリース情報

 

『THE BATMANザ・バットマン-』

ダウンロード販売中!7月6日(水)デジタルレンタル配信開始、4K UHD、ブルーレイ&DVD発売・レンタル開始

■【初回仕様】 THE BATMANザ・バットマン- <4K ULTRA HD&ブルーレイセット>

(3枚組/オリジナル封筒入りキャラクターカード4種セット付)価格:¥8,980 (税込)

■THE BATMANザ・バットマン- ブルーレイ&DVDセット(3枚組)価格:¥5,980 (税込)

発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント 販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント

DC LOGO, BATMAN and all related characters and elements TM and © DC.

 

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