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【Column】未来とは想定外の連続…それでも愛おしい『カモン カモン』(2021)

2022年4月22日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショーの映画『カモン カモン』は、近年、傑作を数多く世に送り出しているA24製作、『人生はビギナーズ』(2010)や『20センチュリー・ウーマン』(2016)のマイク・ミルズ監督によるヒューマン・ドラマ。観終わった後には、人生の価値観がガラリと変わること請け合いの一本である。

 

 

突然始まった甥っ子との共同生活

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『カモン カモン』配給:ハピネットファントム・スタジオ © 2021 Be Funny When You Can LLC. All Rights Reserved. 4月22日(金)より  TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

 

NYでラジオジャーナリストとして1人で暮らすジョニー(ホアキン・フェニックス)は、妹から頼まれ、9歳の甥・ジェシー(ウディ・ノーマン)の面倒を数日間みることに。
LAの妹の家で突然始まった共同生活は、戸惑いの連続。
好奇心旺盛なジェシーは、ジョニーのぎこちない兄妹関係やいまだ独身でいる理由、自分の父親の病気に関する疑問をストレートに投げかけ、ジョニーを困らせる一方で、ジョニーの仕事や録音機材に興味を示し、二人は次第に距離を縮めていく。
仕事のためNYに戻ることになったジョニーは、ジェシーを連れて行くことを決めるが…。
 

「未来」「人生」とは何か?

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『カモン カモン』配給:ハピネットファントム・スタジオ © 2021 Be Funny When You Can LLC. All Rights Reserved. 4月22日(金)より  TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
 
本作は、‘‘家族’’とはほとんど無縁に近い独身男性が、突如、甥っ子の面倒を見ることになり、右も左もわからないまま、まだ幼い子供との共同生活を送る姿が描かれる。
独り身の男が疎遠になっていた子供や近所の子供と時間を共にすることで、人生の価値観が大きく変わっていく様子を映し出した作品はこれまでも数多く製作されてきたが、本作は、そのどれとも一線を画す作品である。
なぜならば本作は、フィクションとして製作されながらも、ホアキン・フェニックス演じる主人公のラジオジャーナリストが、様々な境遇の子供たちへ実際にインタビューをするというドキュメンタリーのような描写も目を引く作品となっており、まるで実際の記録映像を観ているかのような錯覚さえ覚えるのである。
そして子供たちへのインタビューの内容もまた興味深く、「未来」を担う存在である子供の視点から見た「社会」「人生」「未来」といったものを問いただすものになっている。
非常に哲学的なテーマを扱っている印象も強く、子供たちの解答から、観ているこちら側までもが考えさせられる、そんな作品だ。
 

 

 

‘‘カモン カモン’’のタイトルに込められた意味

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『カモン カモン』配給:ハピネットファントム・スタジオ © 2021 Be Funny When You Can LLC. All Rights Reserved. 4月22日(金)より  TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

 

本作のタイトルにある『カモン カモン』の意味とは何なのだろうか?

原題にある『C’MON C’MON』には‘‘先へ 先へ’’という意味がある。

劇中で9歳の少年・ジェシーの口から発せられる言葉なのだが、そのタイトル回収もまた非常に秀逸。

未来とは、想定外のことが起きるものなのだ。だから先へ進むしかない。どんどん先へ…。

劇中で登場人物たちが置かれた状況とリンクさせるセリフ回しであると同時に、観ているオーディエンスへと向けた言葉でもある印象を受ける。

きっと誰しもが「人生は不公平だ」と感じたことがあるだろう。何事も思い通りにいかないことが多いからだ。

でも、それが「人生」というものなのだ。「未来」は誰も予想できない。良いこともあれば、悪いことだってある。それでも、先へ先へ進むしかない。

そのすべてが愛おしいことなのだ。

 

個性派俳優ホアキン・フェニックスの優しい演技

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『カモン カモン』配給:ハピネットファントム・スタジオ © 2021 Be Funny When You Can LLC. All Rights Reserved. 4月22日(金)より  TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

 

主人公ジョニー役に扮するのは、個性派俳優ホアキン・フェニックス

ホアキンと言えば、『ジョーカー』(2019)のタイトルロールに始まり、『ザ・マスター』(2012)のカルト教祖、『インヒアレント・ヴァイス』(2014)の個性派探偵など、クセの強いドギツイキャラクターを多く演じている俳優である。

また、かつては私生活でも奇行が目立ち、根っからの個性的な人というのが正直な印象だ。

しかしながら、本作のホアキンはいたって普通の男を演じて魅せる。

その狂気に満ちたおなじみの表情は封印し、甥っ子との共同生活に四苦八苦しながらも、その愛おしい時間を大切にしようとする男を優しく演じ切っているのだ。

改めて、ホアキン・フェニックスという俳優の演技幅を感じさせる好演だったと言えるだろう。

 

モノクロームで描き出される、珠玉のヒューマン・ドラマ『カモン カモン』。

「未来」というものを考えさせられ、「人生」に対する価値観が大きく変わる作品である。

 

映画『カモン カモン』は、4月22日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー。(文・構成:zash)

 

作品情報

www.youtube.com

 

『カモン カモン』
監督・脚本:マイク・ミルズ
出演:ホアキン・フェニックス、ウディ・ノーマン、ギャビー・ホフマン、モリー・ウェブスター、ジャブーキー・ヤング=ホワイト
音楽:アーロン・デスナー、ブライス・デスナー(ザ・ナショナル)
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ
2021年/アメリカ/108分/ビスタ/5.1ch/モノクロ/原題:C’MON C’MON /日本語字幕:松浦美奈
© 2021 Be Funny When You Can LLC. All Rights Reserved.
 
 

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